2018年7月10日火曜日

【信仰書あれこれ】輝かしく生きるために

バレンタイン・デ・スーザ著『人生を祝福する「老い」のレッスン』(2013年、幻冬舎ルネッサンス)をとりあげます。

私も六十代半ばとなり、「老い」という言葉に敏感になりつつありますが、本書は、まだそんなことを意識していなかった5年前に新刊で購入したものです。何冊かまとめ買いして、一回り年上の知人・恩師などに贈った記憶があります。

著者は、イエズス会司祭のインド人で、「輝かしく生きる日々のために」と題して聖イグナチオ教会 で高齢者の方々に話した内容をまとめたのが本書です。聴衆の大半はキリスト教に関心を持つ人だったようですが、中身は普遍的で、次のような内容です。

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年齢と霊性
  • 講座の中で私は、高齢になるほど「霊性が大切である」と、たびたびお伝えしてきました。「霊性」とは、……“神様に関わる心の動きの高くて美しい所”を意味するものです。1999年にWHO(世界保健機関)が健康の定義を改定した際、この「霊性」について触れ、世界中の大きな関心を呼びました……人間は最後の瞬間まで生きる意味を見つけようとする存在です。人と人との関わりを求め続け、さらには大いなる存在(神・仏)につながっていたいという気持ちを持っていることでしょう。人間を超える大いなる存在へ、謙虚に精神を向けていくこと。その心的傾向を「霊性」と呼んでよいかもしれません。(本書4~5頁)
高齢者のためだけの本ではありません
  • 高齢者の方々が、「霊性」を深め、精神的に豊かな人生を送るにはどうすればよいのか。戦前・戦後を経て今日まで生き抜いてきた輝かしい経験を次世代にどう伝えていくか、そして、限りある人生をどのように生きていくのが望ましいかについて、様々な角度から考えたのが本書です。高齢者自身はもとより、その周りで生活する若い方々にもこの内容をよく理解していただき、より良い社会を先輩と一緒になってつくり上げていただければ幸いです。(5頁)
本書で一か所だけ紹介するとすれば、次の部分になります。
  • マザー・テレサは機会あるごとに「痛くなるまで愛しなさい」と言っておられました。これは、「自分の痛みとともに、誰かを愛しなさい」ということであり、これこそが無条件の愛です。例えば、あなたは、この間の東日本大震災の被災者に、何か寄付をされましたか。寄付をする際に、あなたは何かを犠牲にしましたか。あなたの大切な物を手放す、あるいは欲しかった物を我慢することで寄付をしましたか。もし余っている物、あなたにとってどうでもよいような物を寄付したのだとしたら、それは愛によるものではありません。人に何かをしてあげるとき、あるいは物をあげるというときは、自分の一番大事な物を犠牲にする気持ちでしてあげてください。自分の大切な物を失う痛みを感じること、その痛みによってわずかでも相手の辛い状況を共有することが大切なのです。(46~47頁)
この部分には、「痛くなるまで愛しなさい」という見出しがついています。果たして自分が、寄付をする場合に、そのつど、「自分の心が痛くなるまで」、それをしているかというと、そうでないと言わざるを得ません。非常にチャレンジングな勧めですが、愛の本質をついた説明に襟を正されます。

著者は他にも以下のような、読みやすくて内容の濃い本を書いています。
いずれも70頁前後と薄く、数行の警句めいたバレンタイン神父の言葉を編んだものです。人を励ましたいときや、何かのお祝いとして差し上げるのに適した本たちです。

JELA事務局長
森川 博己

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